同一労働同一賃金の理解

 

2018年6月29日に働き方改革関連法が成立し、いよいよ働き方改革も本格稼働です。中身は時間外労働の上限規制や有給休暇の5日間義務化、インターバル制度の普及など「時間」に関する内容が多いのが特徴です。こちらは「守る側」も「守らせる側」も時間という定量的なモノサシがあるため、制度を作ることで運用はそれほど大きな問題はないと考えています。
ただ、問題は定性項目になります。特に・・・

『有期雇用労働者について、正規雇用労働者と①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の均等待遇の 確保を義務化』

いわゆる「同一労働同一賃金」は自分が人事担当者であれば、相当頭を悩ますタネになりそうです。そこで今回は、同一労働同一賃金について少し考えてみます。

同一労働同一賃金を法令にて確認してみると、『短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の8条と9条が該当いたします。そのうち8条の新旧を下記の通り取り上げました。

【旧】
(短時間労働者の待遇の原則)
第八条
事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合に おいては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働 者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

【新】
(不合理な待遇の禁止)
第八条
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

今回の【新】で目立つのは、【旧】で「待遇」という表現から、「基本給・賞与その他待遇」というわかりやすい表現に変更されていることが目立ちます。9条も同様です。

では、この変更点を踏まえて「職務内容」が正規と非正規にて不明確な企業は何をするべきなのでしょうか。選択肢は2つです。

◆選択肢① 同一労働対象者に、同一賃金(基本給・賞与その他待遇)を支払う
◆選択肢② 正規従業員と非正規従業員の「職務の内容」を明確に区分する

国の意向としては、選択肢①かと考えますが、現実的に中小企業が取り組むべき選択は、選択肢②になる可能性が高いと思われます。ただし、中小企業が正規と非正規のそれぞれの職務ガイドラインやコンピテンシーモデルを当初から作ることは容易ではありません。そこで必要になるのは、まずはこんな簡単なリストで職務の区分を明確にすることです。ここに、正規従業員がするべき(特に負担感の高い)、クレーム対応や危険作業または異動を伴う職務変更などを記載し、社内に周知・掲示し、非正規従業員の業務に対する安心感を醸し出すことが重要です。
その後、職務内容のガイドラインを少しずつ作成していく。というステップにより選択肢②を推し進めていくことがひとつのストーリーになります。

もちろん、上記のようなリストを作成するだけではなく、運用面において管理者が求められるのは、非正規従業員に上記リストを絶対にさせてはいけないという法律の理解と社内の仕組み作りです。特に仕組みづくりは、正規従業員の対応力のレベルアップはもとよりクレームや危険業務をなくすための業務環境づくりなど、これまで以上のマネジメントレベルが問われますので、管理者のみなさまはこれまで以上に大変になるかと思いますが、少しでもそのご支援をできるように私たちも尽力して参ります。

◆自己紹介
氏名:野嵜 晃弘(のざき あきひろ)
住所:名古屋市在住
年齢:1971年生まれ(47歳)
仕事:キャリアリテラシー代表(人事制度コンサルタント、研修講師、大学キャリア支援)


サラリーマン時代
上場企業小売業にて営業部門11年、管理部門11年を過ごし、その内17年間を管理職として業務を遂行。主に人事責任者として独自性を活かし採用活動・管理職研修・人事制度等にてこれまでにない取り組みを導入。その成果として勤続年数を10年間で4.8年から9.0年まで延ばし人材の定着を図り、勤続中に売上高が5倍になった企業の成長に尽力。

独立時代(現在)
独立後は主に人事制度の導入コンサルタントとして、人事考課表作成から評価者指導までを一貫して担当。特に初めて人事評価制度を導入する企業に対してシンプルでありながらも、目標設定やフィードバック面談を中心に運用する人材育成を重要視した制度内容にて設計している。また研修講師としては、評価者研修、目標管理研修はもとより、マネジメント系研修からコンプライアンス系研修まで幅広く担当

所属、資格
株式会社中部キャリアコンサルティング普及協会
愛知県地場産業若者人材確保支援事業専門コンサルタント
岐阜県働き方改革推進支援センター専門家
キャリアコンサルタント(登録番号16089990)
NUCB-MBA
ファイナンシャルプランニング技能士2級

趣味
鉄道(以前は特急派でしたが最近はローカル線が好きになりつつ・・・)
クイズ(一番良い成績は12,000人参加で優勝もありますが、先日の大会は予選落ち・・・)
ポケモンGO(もうすぐレベル40ですが、止めるタイミングがわかりません・・・)